日曜日の朝を迎えました。
早くもイタリアにきて一週間が経過。旅の折り返しです。
今回のトラーパニ滞在で、新たな発見が一つありました。
いつもお世話になっている宿「Donna Franca」の敷地内に
滞在客専用の屋外プールがオープンしていたのです。
(写真:シチリアのパラダイス)
といってもまだ、一部が未完成で
工事用のスコップやら三輪車やらがプール脇に残っています。
塀で囲まれたカンティーナの敷地の外側、ぶどう畑のど真ん中です。
こんなシチュエーションは、そうそうナイですよね。。。
プールサイドには、白いビーチベッドが4個。
あまり部屋数が多くない宿だから、泳ぐ人もまばらです。
目覚めた日曜日の朝、プールのあたりを含めて景色を楽しんでいたら
一組のご夫婦が泳いでいらっしゃいました。
(写真:プールサイドにて)
真夏の太陽が遠慮なく照りつけるプールサイドに
私もフラフラ、散歩がてら遊びに行ってみました。
彼らが泳いだりくつろいだりしているところをぼんやり眺めつつ
ソファベッドに寝転んでいると、彼らが英語で話しかけてきました。
「どこから来たの?」
話してみると、彼らはオランダ人でバカンスのために
ここに一週間ばかり、滞在しているのだそうです。
特にどこかへ忙しく観光するわけでなく、
ただこうして何もないぶどう畑の真ん中でゆっくり時を過ごす。
カンティーナのワインに舌鼓を打ちながら、
夕食になるといそいそと車で出かける。
なんだかそんなゆったりとしたヨーロッパ人のバカンスを
垣間見たようで、とても興味深くそして憧憬の念を抱きました。
私のような仕事絡みの旅行では、
ゆっくりするようなヒマもなく、あくせくいろいろ嗅ぎまわって
結果として忙しい旅行に終わりがちですからね。
つかの間の時間でしたが、一瞬のバカンス・モードを楽しみました。
夕方(といってもまだ日が高くて真昼のようですが)、
取引先であるトラーパニの塩田経営者が迎えにやってきました。
「Framingo Salt」ブランドでおなじみの塩で、
日本に輸出されています。
ミネラル豊富なここのお塩を使ってパスタをゆでると、
なぜか他のお塩よりもだんぜん、パスタが美味しくなるのです。
さらに、貴重なお塩「フィオール・ディ・サーレ」は
きつくない味で、わずかに甘みさえ感じる逸品。
私はどんな料理でも、仕上げにこのお塩を欠かすことはできません。
それくらい、ハマってしまう味なのです。
(写真:Framingo Saltショールームにて)
昨年、創業者オーナーだったサルヴァトーレ氏が病気のため死去。
彼は、私が数年前に初めてこのメーカーと取引を開始したとき
私をノートの町まで迎えにきてくれ、熱心に説明してくれました。
まるで昨日のことのようです。
今日、迎えにきてくれたのは、そのあとを引き継いだ新オーナー。
塩田は、古代フェニキア人がここトラーパニで塩作りを伝えた
その同じ場所に、ずうっと何も変わることなく存在しています。
はるか彼方にまで広がる塩田風景は、見事と言うか「壮大」の一言。
2000年前と変わらない風景で360度、海に囲まれている感じ。
(写真:自然が守られた広大な塩田)
ちょうどこの時期は、塩が干上がり始めている頃です。
一般人は見ることができない管理地に連れて行っていただきました。
海に隣接された塩田は、文字通り田んぼといって差し支えなく、
あぜ道で仕切られた田んぼには、水車を回して海水が引き込まれます。
塩田のあちらこちらに見える水車小屋が、風情がありますね。
「アルキメデスの螺旋」というシステムを使ったりするようですが、
現在では動力ポンプも使用されるようです。
(写真:水車小屋など)
トラーパニはアフリカから吹いてくる熱波「シロッコ」が
時折吹いたりして、特に夏の間はものすごい暑さになります。
その太陽熱をたっぷり受けた海水が、塩田で徐々に干上がっていく。
すると、底のほうに塩の塊ができてきます。
水は徐々に赤くなっていきますが、これはプランクトンのせいと
あとは土の中に含まれる鉄分だと解説してくれました。
海塩作りは、その土壌成分が塩にわずかに残ることとなるため、
それぞれの土地で味も色も微妙に変わってくるもの。
そのため、世界中あちこちにある塩田には、
それぞれの土壌ゆえの味の特長がある、というわけです。
(写真:通常のお塩(上)とフィオール・ディ・サーレ(下))
今回は、初めて「フィオール・ディ・サーレ」の現物を
塩田で発見することができました。
このお塩は、塩田の底に塊としてできる塩とは違い、
海面に浮き上がってきます。
(写真:フィオール・ディ・サーレが浮いている部分)
サラサラとしていて、そのままにしておくとやがて沈んで
塊の一部になってしまうわけですが、その前に収穫すると
しっとりとした感じの細かい塩の結晶が取れるというわけです。
土壌と接していないため、純度が高くかつ汚れがない。
味は極上。しかも稀にしか浮いてこない塩なので珍重され、
普通のお塩と比較にならない高値で取引されます。
塩田見学を終えて商談開始。
昨年、水害にあってほとんどの塩メーカーの在庫が終了したそうで
現在、収穫待ちとなっているとのことでした。
そういえば、いつも積みあがって寝かせてあるはずの塩の山が
今年は一つも見当たりません。在庫がまったくないのでしょう。
出荷はバカンスあけの9月ということで、船で届くのは11月頃に
なりそうです。待ち遠しいです。
(写真:発注を終えて)
夕食は、トラーパニの日本人、といえばこの人だろう!といわれる
有名人「シチリア料理研究家 佐藤礼子さん」と一緒に
海辺のレストランに向かいました。
佐藤さんは宿を予約してくれたり、メーカーさんを案内してくれたり
何かとシチリアではお世話になっている方です。
トラーパニから車で30分程度の小さな町「マラウサ」の海辺。
今日は日曜日なので、夜8時頃からすでに満席の大混雑でした。
海鮮リゾット、リッチ・ディ・マーレ(ウニ)のパスタ、
それに子牛肉のタリアータ(タタキ状態)を注文しました。
(写真:美味しいシチリア料理)
さすがに海辺だけあって海の幸は鮮度がよく、
特にウニのパスタは、シチリアでも希少なウニをよくぞこんなに
使ってくれたものだ!といわんばかりの量で、大満足です。
日本のウニと違い、身が細いし値段も日本より高いくらいです。
一年ぶりにご一緒に食事しながら、近況を報告しあいました。
聞けば、新しく料理教室用のキッチンスタジオを作ったそうで、
ご活躍ぶりが目に見えるようでした。
ご馳走さまでした♪
明日は、佐藤さんがまた新しいオリーブオイルのアグリツーリズモを
ご紹介してくださるそうで、こちらも少々、楽しみです。
(写真:La Perla 海辺のレストラン)