
印象派の作品を集めたオルセー美術館。入場待ちの列に加わりました。最後に見た「星降る夜」で、動けなくなりました。ゴッホの力強いタッチは、まるで今にも動きだすかのようです。町の道路に点々と続く優しいガス灯と無数の星のきらめきが、コバルト・ブルーの濃厚な闇夜に浮かび上がります。美術の教養はないのに、何か大きな力に心が突き動かされる感がしました。

名画の感動に浸って向かった先は、モンマルトルの丘の中心・テアトル広場。かつて印象派の画家たちも腕を磨いた同じ場所で、今では似顔絵描きたちが店を広げています。パリで初めて、自分の似顔絵を描いていただきました。

画家たちが作品を展示し、客に声をかけます。似顔絵コーナーをぐるりと一周して作風をチェックしてから、小柄な東洋人画家の男に頼みました。画家の目には、私がかけていたセルフレームのメガネが印象的だったようです。実際よりも10歳は若い(!)モノトーンのデッサン画を、45分後に手にしていました。近くの画材屋さんで保管用の筒を購入し、記念に日本に持ち帰ります。

雨まじりの中を歩いて、間口1メーターくらいの街角のクレープ屋さんに立ち寄りました。一番安いシュガー・バター・クレープをオーダー。あっという間に焼きあがる薄いクレープの上に、バターをたっぷりと、グラニュー糖もどっさり、ただそれだけ。とてもシンプルだけれど、無性に恋しくなる味。きっと小麦とバターの質がよいからに間違いありません。

白黒のデッサン画 50ユーロ。
とろける美味しさのクレープ 2ユーロ。

丘の上からは、曇ったパリの街を一望。心も胃袋もたっぷり温まる午後でした。